
自分開発鉄道とは、物理的な距離ではなく、ひそやかに伸びていく成長距離を走る鉄道である。
町から町へと人を運ぶ鉄道は世の中にいくらでもあるが、この鉄道の線路は、いつのまにか自分自身の内側へと続いている。朝のホームに立ち、まだ眠りの残る空気を吸い込みながら列車に乗り込むと、車窓の外にはいつもの街並みがゆるやかに流れてゆく。しかし、そのあいだに流れている時間は、決して空白ではない。
ページをめくる指先に新しい考えが芽生えたり、ぼんやりとした思索の雲が晴れたり、ふとした瞬間に明日の輪郭が見えてきたりする。そうして列車が一駅進むたび、ほんのわずかに自分が更新されていることに気づくのである。
自分開発鉄道は、そんな小さな前進を運ぶための鉄道だ。車両の静かな設え、窓から差し込む光、ほどよく整えられた空間のすべてが、移動のひとときを思索と再生の時間へと変えていく。日常の通勤や通学というありふれた往復も、この鉄道に乗れば、どこかへ向かう冒険の途中のように感じられる。気がつけば、降り立った駅の風景は昨日までとは少し違って見え、胸の奥には小さな前進の手応えが残る。
自分開発鉄道が運んでいるのは、人の身体だけではない。まだ形になっていない未来の可能性なのである。