トマム駅
トマム。
その名を初めて耳にしたとき、私は得体の知れぬ魔力を感じた。
「トマム」とは何だ。遠き異国の呪文か、それとも北の大地にひそむ秘密の合言葉か。
石勝線の「石勝高原駅」が「トマム」に改称されたと聞けば、ますます謎めいてくる。
私は心をざわつかせながら地図を開き、そこで思わず息をのんだ。
そこには、バブルの夢が生んだ異形の塔がそびえていた。
山の中に突如現れた超高層のホテル群。その姿はまるで雲間に浮かぶ幻の都市。
霧に包まれた建築群は、現実のものとは思えぬほど異様な風景を形作っていた。
私はその光景に強烈なインパクトを受け、
ひそかに誓った。いつか必ず、あの地を訪れようと。
そして幾星霜、大人になった私はようやくトマムへとたどり着いた。
かつて夢見た幻影は、今も変わらずそこにあるのか、それともすでに過ぎ去った幻想なのか——。
バブルの夢、アルファリゾートへの入口
「トマム」(苫鵡)の地名は、アイヌ語で「湿地」を意味する「トマㇺ(Tomam)」に由来する。(トマム駅 – Wikipedia)