
道をのんびりと走っていると、日常の風景の中に、どうにも現実とは思えぬ光景が紛れ込んでくることがある。あの日、ふいに現れたのは小田急8000形の車体だった。いや、正確には「かつて電車であったもの」が、トラックの荷台に載せられて運ばれていたのである。
見慣れたはずの小田急の車両が、線路の上ではなく舗装された道路を進んでいく。その奇妙さに、一瞬、頭の中の時間が止まる。長いあいだ人々を乗せて走っていた電車が、切り分けられ、静かに別の場所へと運ばれていく姿は、どこか夢の断片のようでもあった。
走り去るトラックの後ろ姿を見送りながら、鉄道の終わりというものは、こうして不意に現れるのだと知る。線路の上での最後ではなく、こんな場所で思いがけず出会ってしまう別れもある。
日常のただなかで目撃したその光景は、妙に現実味を帯びながら、しばらく胸の奥に残り続けたのである。







