
机の引き出しを整理していると、ふと一枚の古い記念切符が現れることがある。「おわかれ白糠線」と記されたその小さな紙片は、昭和58年10月に静かに役目を終えた白糠線の名残である。
北海道の片隅を走っていたこの路線には、なぜだか妙に心を引かれる駅名があった。「北進」。地名というより、まるでどこかへ向かおうとする願望そのものを駅名にしてしまったかのような、不思議な響きである。地図を眺めながら、その言葉の持つ力にぼんやりと想像を巡らせた記憶がある。
まだ自由に旅へ出られる年頃でもなかった私は、白糠駅へ為替を送り、記念切符を買い送ってもらった。遠い北の駅から届いたその切符は、旅をしていないはずなのに、確かに小さな旅の匂いを運んできた。
紙一枚の記念切符ではあるが、そこにはもう存在しない線路と、遥かな北へ続く想像の道が静かに残っているのである。

この先に北進駅があった。