
今はもう存在しない筑波鉄道の名を聞くと、どこか霞の向こうへ消えていった線路を思い浮かべる。その記憶を小さな紙片の中に閉じ込めたものが、「筑波山ガマ祭り記念乗車券」である。昭和56年に作られたその切符には、名物である「がまの油」を思わせる迫力ある写真が大きく使われ、眺めているだけで祭りの熱気が伝わってくる。
筑波山の麓へ向かう列車に揺られ、人々はこの祭りを目指して集まったのだろう。賑わう参道、土産物の並ぶ店先、そして独特の口上で知られた「がまの油」の世界。その空気を乗せて走る筑波鉄道は、単なる移動手段ではなく、祭りへ続く道そのものだったに違いない。
廃線となった今では、その風景を実際に辿ることはできない。それでも、この記念乗車券を手に取ると、かつて筑波山へ向かっていた小さな旅の時間が、静かによみがえってくるのである。