
引き出しの奥から現れた一枚の記念切符には、時間そのものが封じ込められているように思える。鉄道開業111周年を祝って、昭和58年10月14日に発売されたその切符には、東京駅を背景に国鉄の名車たちがずらりと並んでいる。
蒸気機関車から電気機関車、特急車両に至るまで、時代ごとの主役たちが一堂に会したその図柄は、単なる記念の域を超え、鉄道という長い歴史の縮図のようでもある。ひとつひとつの車両が、それぞれの時代の旅を背負いながら、この小さな紙の上に静かに佇んでいる。
111年という年月は、決して軽くはない。線路が延び、街と街が結ばれ、人々の移動のかたちは幾度も変わってきた。そのすべてを見届けてきた鉄道の歩みが、この一枚の中に凝縮されているのだと思うと、不思議と胸が温かくなる。
切符という本来は使われて消えていくものが、こうして時を越えて残り、過去の旅へと誘ってくれる。眺めているうちに、どこか遠くへ出かけたくなるのは、そのためなのかもしれない。